詠み人知らず







「あ、まただ」

「ナニ?」



学校の図書館で、2人で試験勉強。

リョーマが化学を、桜乃が古文を教える、という取り決めで。

 今は、桜乃がリョーマに教える番だったが、リョーマが問題を解く間、参考に持ってきたハードカバーを眺めていた。



「あのね。万葉集なんだけど。『詠み人知らず』って作者がたくさんあるの。」

「・・・・それって、有名な人なの?」

「え!?ち、違うよ」



くすくすと笑われて、リョーマがむっとする。

桜乃は慌てて、

「『詠み人知らず』って、誰が詠んだかわからない、ってことなんだよ。」

「・・・ふーん・・・」



リョーマには、桜乃がどうしてソレに反応したかがわからない。



「あのね。有名な歌人や天皇じゃなくても、いろんな生活があって、いろんな恋をしてたんだなぁ、って。」



自分で恋、と発音してしまったのが急に気恥ずかしくなったのか、真っ赤になってしまう。



「あ、えっと、何云ってるんだろ、私。」

「ホント。ちょっと落ちついたら?」



リョーマが、桜乃を見つめる。

「・・・・リョーマくん・・・?」





「・・・オレ達みたいに?」



「え?」





リョーマの言葉の意味がわかるには、あともうすこし。













05.5.18    


桜乃ちゃんは、万葉集とか好きそう・・・と思う私は莫迦ですか



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