はないちもんめ










『何の音?風の音。・・・・本当に?』



















 また、耳の奥で『ことり』と音がした。

振り返っても誰もいない。

 

―――なんだろう?



 知りたいような、でも、知ってしまったら最後のような。

よく、わからない感覚。



「さくの〜〜〜!」



大好きな友達の声に、顔を上げて走り出した。

全て、気のせい、ということにして。





 今日は正式な部活は早々に終わり、桜乃はいつもの場所で自主練をしていた。



「あ、またやっちゃった・・・。」



へんな所に、ボールを上げてしまい、コロコロと足元に転がってきた。



「せっかく、いいところまで続くようになったのに・・・。」







「へえ?ホント?」



急に声をかけられて、桜乃は飛び上がる。



「リョ、リョーマくん・・。びっくりさせないでよぅ・・・。」



 弾みで落としてしまったボールがリョーマの足元で止まる。

ゆっくりと拾い上げ、桜乃をじっと見ながら、スローモーションの様に近づいてくる。



―――あ、また・・・。



不審そうな顔をした桜乃に、リョーマが声をかける。



「なに?」

「え、えと・・・。

なんか不思議なんだけど、耳の奥で声・・とういか音?がするの・・。

なんか、危険なような、でも逃げられないような・・・。」



黙ってしまったリョーマに向き直りながら、桜乃はその場を変えようとする。



「な、なんかヘンなこと言っちゃったね!忘れ・・・」



て、と続けるはずだったのに、怖いくらいのリョーマの瞳にすくんで動けなくなった。



「・・・・気づいてたの・・・?」

「え・・・?

りょ、リョーマくん・・・?」

「気づいたならサ・・・。OKって事・・・・?」

「な、何・・・?」



じっと近づいてくるリョーマに、壁際まで追い詰められた。



「・・・そう、『逃げられない』から・・・・」



ああ、声が大きくなる。

『逃がさない、離さない』と言ってる。



声に浸食されて、桜乃は沈んでいく―――。









 1月17日(月)   




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