花火






「ご、ごめんなさ…ッ!」



息をきらしたアイツが走ってきた。



ああ、そんなに走ったら転ぶデショ…?

と思ったら、やはり躓く。



「きゃ…っ!」



と倒れそうになった処を、腕をつかんで体を支える。



「ご、ごめんなさい、リョーマくん」

「違うデショ?」

「え? あ、あの、ありがとう…。」

「ん。」



いつも言っていたことを、最近やっと返してくれるようになった。

『謝るんじゃないデショ?』と。



「そろそろ始まりそうだから、行くよ」

「う、うん」

「それにしても…」

「え?なに?」

「アンタは浴衣とか着ないの?」

「えと…き、着るんだけど…」



俯いてしまう顔を、覗き込む。



「オレには見せてくれないんだ?」

「ち、違うのぅ」



半分泣きそうな言い訳を聞く。

せっかく誘ってもらったのだから、今日は迷惑をかけたくなかった。

慣れない浴衣なんて着たら、何をやらかすかわからないーと。



子供をあやすように、頭を撫でる。



「オレは、アンタを迷惑なんて思ってない。つか、そもそもそう思ってたら、誘わないデショ?」

ん?と確かめるように問う。

オレがそんな面倒なことしないの、アンタが一番わかってるんじゃないの?と。



はっと顔をあげて、アンタは頷いた。



「ごめ…じゃなくて、ありがとう、リョーマくん」

「ン」





「でさ。」

「なに?」

「来年は、浴衣着てきてね」



見えない来年の約束を取り付ける。

ホントは、『来年からずっと』と言いたかったけど。

アンタには、わかんないかもしんないから。

とりあえず、『来年』で我慢してあげる。



「うん…っ!」



見せてくれた笑顔は、今日見たどの花火よりも、夜空に映えた。











2004.8.10     


ほのぼの〜
コネタは暗めなモノが多かったので(掘り起こすまで気づいてなかった・・・)、こんなのもあってホッとしました;



copyright(C)2004- SaKuRa★nome , All rights reserved


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送