−伝えたい言葉は、いつも上手く伝わらない



  苦しくて、叫びだしそうになっても―――  


   

公衆電話 sideR



 

 雨が降ってきた。


 さっきから、何度連絡しても繋がらない携帯に苛立って、ベットに放り投げる。



 ―――つまならない喧嘩をしてしまった。



 たいしたことじゃない、と自分に言い聞かせるようにしている事に、リョーマは気づく。
 不安だからだ。ここ最近の、愛しい恋人の様子が。



 ずっと、不安がっている事は知ってた。
それこそ、出会った頃から、桜乃は自分を眩しいものを見るように見る。
眩しい、と思っているのはリョーマの方なのに、そんな事には気づきもしないで、「私なんか」を繰り返す。



そんな処も、惹かれた要素ではあるのだと自嘲するけれど。いい加減に『自分』に自信を持って欲しかった。
なんで、言葉は肝心なコトだけ伝わってくれないのか。



きっと、傷つけた。



先ほど放り出した携帯が、着信を告げる。
叩き付けなかった事に安堵しながら、ディスプレイを見る。
『公衆電話』---。
普段なら無視を決め込む処だが、何故だかリョーマは、通話ボタンを押していた。




   聴こえてくるのは、雨の音。




「もしもし?」
『・・・・・』
電話の向こうで息を潜めている気配。・・・・泣いてる?



「桜乃!?桜乃でしょ!?」



搾り出すように、聴こえる声。



『・・・・・リョーマくん・・・・・』



やっと繋がった糸を手繰り寄せようと、リョーマは焦る。



「今何処!?迎えに行くから!」
『大丈夫・・・ッ!来ないで、リョーマくん』



指先が、冷たくなっていく感覚。



「ナニそれ・・・・。どーゆーコト?」
『今までありがとう・・・。楽しかった、ホントに』
「さ・・・」



プー、と、電話から音がする。



『10円玉、もう1枚しかないから』
「携帯は!?」
『・・・・もう、使わない・・・・』



もう出ない、ということか。



『リョーマくんと一緒にいれて、夢見たいだった。ありがとう・・』
「桜乃! 顔見て話せないの」
『・・・顔見たら、私・・・・』



雨の音で、よく聞こえない。リョーマは焦る。



PU-----



『最後の10円玉なの。もうすぐ切れちゃう・・・』
「んな・・・勝手に一人で・・・・!」
『最後に言わせて。リョーマくんが、大好きだよ。それから・・・・!』



ぶつり、と電話が切れ、後には耳障りな機会音。



「『それから』・・・・って、なんだよ・・・・!」



今度こそ、リョーマは携帯を叩きつける。
やっと少しづつ、自分を見てくれるようになってくれたのに。






「やっと・・・。つかまえたと思ったのに・・・・!」

2005.5.5


以前の日記コネタ。
ど、どうなの、コレ・・・。・・・腐ってます



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