わかってた。
貴方は旅立っていく人だって。
ココでは、飽き足らなくなるヒトだって。
だから、私には引き止める事なんて出来ない。
―――貴方も、そんな事は望んでいないはず。
そう、言い聞かせる。
明日、貴方は空へと羽ばたく。
告げられてから、この1ヶ月、優しい時間を過ごしてきた・・・と、思う。
でも、今日は流石にウマく笑えず。
普段から表情のない貴方ではあるけれども、今日は、勤めてそうしている風で。
さっきから、2人して手を繋いで。
何処へ行くともなくただただ歩いて。
時折ぎゅっとその感触と存在を確かめて。
車の走り去るテールランプや、道沿いに並べられたライトなんかを数えたり。
『今』の話だけを。今、見ているものだけの話を。
お互い時計も持たず。
携帯の電源も切ったままで。
明日が来なければいい、なんて。
思ったことには、ずっと、気づかないままで。
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