彼女みたいで、あれたらよかったのに



気まぐれにアナタを想う




「もう、いい!」



一方的に怒って、電話を切ってしまったのはいつだったか。

数回流れた約束。

「仕切りなおし、今度こそ」と約束を取り付けて。

本当に久しぶりに会える、と、何を着て行こうかと何日も考えて。親友に苦笑されるくらい浮かれていて・・・

楽しみにしていた分だけ、その反動も大きかった。

毎度毎度・・・当たられる携帯電話も可愛そうだけれど。



「よく、壊れないよね・・・」



壊れないのは、携帯のことか、それとも。





―――悪い



電話の向こうで呟く声を聞いた瞬間の感情。

またか、という気持ちも諦めも、何処か冷静に見つめている自分もいたけれど。

でも、暴走した感情は悔しくて悔しくて。

泣きたくなくて、泣いたとばれるのが嫌で、一方的に電話を切った。





それから、連絡していない。





あの頃、「テニスと自分とどっちが大事か」なんて言葉は決して言うまいと思っていたけれど、今だって「自分と仕事」を大人しく天秤にかけてやるつもりはない。

それは、朋香の意地であり、プライドだ。

こんな時、可憐な親友の姿がちらつく。

彼女を見習いたいと・・・彼女の様になりたいと、ずっと思っていた。

あの、難攻不落のテニスの王子様を『落として』、ずっと支え続けて。

海外に行っている事だって多いから、会えない時間は本当に長いのに。



―――自分は、こんなにも我侭だ



「・・・テニスは、見ていられたからな・・・」



桜乃のボディガードも兼ねて、弟たちの面倒がない日は、コートに通った。

『越前リョーマ親衛隊長』を自称していた、あの頃。





携帯のディスプレイを見て、溜息をつく。

元々、電話なんて自分から掛けてくる人じゃない。

メールだって、こちらから送るものの返信ばかりだ。

返信する必要がないからーーー自分が、メールをしないからーーーメールも来ない。

理屈としては合っていて、悲しいんだか情けないんだか、わからない。



自分が一人で怒って焦れて、堂々巡りを繰り返す。

そして、ふっと冷静になって、怒ってしまった事にバツが悪くなる。

仕方のないことだ、と解ってる。



ただ、悔しい。



自分一人が会いたいと思っているようで。

メールでも電話でも約束でも。

それこそたくさんのボール出しをしなければ、先輩からのボールは帰ってこない。



「私が諦めたら・・・あっさり終わっちゃうのかな・・・」



相変わらず背の高い先輩に、必至にしがみついてるだけの、子どもの様な自分が悔しい。

相手も兄弟の『お兄さん』だが、自分だって、ずっと『お姉さん』を強要されてきて、幼い弟達の『お母さん』でもあったのに。

たった1つの差なのに・・・。昔から、先輩は妙に大人で。



―――悔しい。

でも、このまま終わらせて、他の人に渡してしまうは、あまりに悔しい。

結局、いつも負けているのだ。







「・・・仕方ないか」



呟いて、極めて『いつもどおり』を意識したメールを打ち込んだ。









今度こそ絶対ですからね、今度破ったらもう知りませんからねと

バツの悪さも手伝って散々我侭を言った約束の日。



「先輩・・・疲れてますよね」



元々無口で愛想のない人だが、感情をまったく見せない人ではない。

むしろあの頃は、些細なことで某先輩といがみ合ったり喧嘩したりしていたのを知っている。

ここまでぼんやりと『鈍い』のは、疲れているのだと、誰よりもわかる自信がある。



「・・・たいしたことない。・・・お前こそ、いつもの元気がないじゃないか」

「・・・そんなにいつも煩いって言いたいんですか」



少しでも気にかけてくれたことが嬉しくて・・・でも、嬉しいと思ってしまうのも悔しくて、つい憎まれ口を利いてしまう。



先輩は、少し目を眇めて、眼差しを緩めた。



「・・・調子が狂う」



ふっと優しくなる眼差しに、ドキドキしてしまうのはいつもの事。

でも、その瞳には、いつもの覇気がない。

―――疲れているんだ。

先輩が、本気で忙しかったことは、メールや電話の端から伝わってきていたのに。



「先輩、疲れているんだったらもう帰りましょうか」

「別に、構わない」

「だって・・・」







「『もう知らない』といわれるのはキツイからな」







苦笑したような先輩の顔が、どうしようもないくらい嬉しいのに。

自分ばかりが、相手の事を気遣ってあげていない、と打ちのめされる。







「・・・桜乃みたいだったら、よかった・・・」

「・・・何が?」

「桜乃だったら、あんな喧嘩もしないで、先輩に我侭いわないで。そんなに疲れさせないで。

桜乃だったら・・・」



こんな事で泣きたくない、と思っているのに、視界が白く歪んでいく。

私が先輩の足を引っ張っている・・・。







「莫迦か、お前は」





呆れたように。頭をくしゃっと撫でられ、溜息が落ちてくる。



「莫迦って何よ!人が真剣に・・・」



「お前は、まだ越前がいいのか」





「は、あ!?」



思ってもみなかったことを急に言われて、涙も引っ込んだ。



「そっちこそ、何莫迦な事言ってるんですか!?」

「昔、どれだけ泣いてたか、知ってるからな」



リョーマ様と桜乃が付き合い始めたとき。

頭では十分納得していたのに、感情はなかなかついていかなかった。

桜乃は優しすぎるから。

『憧れだったから。芸能人を見て騒ぐのと一緒だよ』

気を使いすぎる桜乃の前では笑い飛ばしていたけれど。

・・・あの時期を、この人が支えてくれた。







「・・・今、私が付き合ってるのは先輩ですよ?」

『誰かの代わり』なんて考えたこともない

怒りますからね、と真剣に睨む。



「・・・だったら、竜崎になる必要はないだろう」



「・・・え?」



「俺は、竜崎の代わりだと思って、お前といる訳じゃない。

ここにいるのは竜崎じゃないだろう」



ぽかんとしてしまった私に、余計な事まで言ってしまった、というように眼を逸らす。





「俺は越前になるつもりはないし、お前も竜崎になる必要もない」







とりあえず行くぞ、と席を立つ。



先輩はこっちを見てくれないけれど、きっと顔は赤くなっているに違いない。



そっか、私は、私だ。先輩が、先輩であるように。







「私、これからも怒ったり我侭言ったりしますよ?」



「お前が、怒っているうちは、傍にいるんだと思うから。

・・・電話の向こうで泣くのは、勘弁してくれ」



どうやっても、やれないから、と。



解りにくいけど、こんな処に惹かれたんだ、と再認識したりして。

嫌がられるのを承知で、腕にまとわりついてしまおう。



「先輩の相手が出来るのなんて、私くらいだもんね!」











 2007.06.12    


コネタじゃない量・・・(あくまで当社比)

Cしゃーん、勝手に妄想膨らませてすいません(>_<)!!!





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